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宇都宮家庭裁判所栃木支部 昭和62年(家)152号 審判

申立人 藤村正子

相手方 石井友子 外1名

主文

1  被相続人藤村一の遺産を次のとおり分割する。

(1)  別紙1遺産目録不動産符号3、4、6ないし11、15ないし18記載の土地、符号1、3、4記載の建物は、申立人藤村正子の取得とする。

相手方石井友子及び相手方藤村広は、申立人藤村正子に対し、別紙1遺産目録不動産符号3、6ないし8、10、15、16記載の土地につき、遺産分割を原因とする各4分の1の持分移転登記手続きをせよ。

(2)  別紙1遺産目録不動産符号5、12ないし14記載の土地、符号2記載の建物は、相手方石井友子の取得とする。

申立人藤村正子及び相手方藤村広は、相手方石井友子に対し、別紙1遺産目録不動産符号12ないし14記載の土地につき、遺産分割を原因とする申立人藤村正子は2分の1の、相手方藤村広は4分の1の持分移転登記手続きをせよ。

(3)  別紙1遺産目録不動産符号1、2記載の土地は、相手方藤村広の取得とする。

(4)  別紙1遺産目録その他の財産1(2)、2(1)、(2)(a)〈2〉〈4〉、5、6、8、10、11、12(1)〈1〉ないし〈3〉、(2)〈1〉ないし〈3〉記載の財産は、申立人藤村正子の取得とする。

(5)  別紙1遺産目録その他の財産3の2分の1、9(1)記載の財産は、相手方石井友子の取得とする。

(6)  別紙1遺産目録その他の財産1(1)(3)、2(2)(a)〈1〉〈5〉、(b)〈1〉〈2〉、(c)、3の2分の1、4、7(2)、9(2)記載の財産は、相手方藤村広の取得とする。

2  遺産取得の代償として、申立人正子は、相手方広に対し、186万9200円、相手方友子は、申立人正子に対し、612万9956円、相手方友子は、相手方広に対し、221万5056円を支払え。

3  審判費用は各自の負担とする。

理由

1  相続の開始、相続人及び法定相続分

被相続人藤村一(以下、「被相続人一」という。)は、昭和58年2月25日死亡し、相続が開始した。その相続人は、被相続人一の妻である申立人藤村正子、被相続人一の子である相手方石井友子及び相手方藤村広である(以下、それぞれ「申立人正子」、「相手方友子」、「相手方広」という。)。各人の法定相続分は、申立人正子が2分の1、相手方友子及び相手方広が各4分の1である。

なお、被相続人一、相手方友子及び相手方広は、いずれも医師である。

2  遺産の範囲及び価額

(1)  被相続人一の遺産であって本件審判時に現存するものは、別紙1遺産目録(編略)記載のとおりであると認められる。

なお、被相続人一死亡時において存在した財産のうち、別紙1遺産目録中、その他の財産2(2)(a)〈3〉の○○銀行○△支店の普通預金(No.88988)(相続時価額474万7079円)については、申立人正子が、昭和58年4月4日、この預金を引き下ろして、被相続人一の昭和57年度の所得税のうち474万7079円を支払っており、特定の相続人に利益が残存しないから、また、別紙1遺産目録中、その他の財産7(1)記載の普通乗用車(相続時価額6万7500円)については、相続開始後廃車しており、本件審判時に現存せず、しかも、利益を受けた者もいないから、いずれも遺産分割の対象とならないものとするのが相当である。別紙1遺産目録中、その他の財産4保険診療未収金(相続時価額1028万5913円)については、相続財産か相手方広の固有の財産か争いがあるが、昭和58年1月分の保険診療未収金であり、その当時病院の経営者はあくまで被相続人一であって、相手方広は給料の支払いを受けていたものであること、相手方広が被相続人一から藤村医院を承継したのは翌2月からであることから、相続財産と認める。しかし、その余の被相続人一死亡時において存在した財産のうちには、既に費消されていて厳密には本件審判時に現存するとはいえないものもあるが、後記のとおり特定の相続人がそれによる利益を得ていたとみられる事情もあるので、その相続人に対する代償請求権として残存するものとして遺産分割の対象となると解するのが相当である。

また、別紙1遺産目録記載の遺産の中には、相続開始後の果実(利息や自己使用収益)が認められ、これは、被相続人一の遺産には本来属しないが、本件においては、その遺産と併せて精算することが相当であり、当事者も同意見である。

(2)  この遺産の分割時における価額(不動産については、鑑定時の価額と同額と扱うこととし、当事者も同意見である。)は、別紙1遺産目録の「分割時価額」欄記載のとおりであり、合計11億6326万2001円となる。

3  寄与分

申立人正子の寄与分の主張については、申立人正子が、被相続人一の妻として病院の経営に協力してきたことは認められるが、法定相続分を修正するに足りる寄与があったとまでは認めるに足りない。

4  特別受益

特別受益者、受益財産及びその相続開始時の価額は、別紙3特別受益財産目録(編略)記載のとおり申立人正子が807万9000円、相手方広が1932万円であり(税務署の認定のとおり)、その合計額は、2739万9000円となる。

また、申立人正子及び相手方らは、被相続人一の死亡に伴い、別紙5生命保険金目録(編略)記載のとおり生命保険金(申立人正子が合計1億0309万5976円、相手方友子が合計317万7700円、相手方広が合計6746万6763円、総合計1億7374万0439円)を取得しているところ、相手方友子は、これも遺産に含まれると主張する。しかし、生命保険金は受取人の固有財産であって遺産ではないからこの主張は失当であるが、本件においては、各相続人の取得した生命保険金の額に著しい差があるがその合理的理由は明らかでないこと、特に相手方友子については相手方広と同じ医師でありながら著しい格差があり、相手方友子が他家に嫁いだことや相手方広が被相続人一の後継者であることを考慮しても不公平であるし、被相続人一が、保険金受取人の指定及びその受取人の保険金額にことさらに配慮をしていたかも疑問であること、被相続人一の職業、資産からみてその生前から相当の相続税が予想されるから、同人が、残された相続人の相続税に対する対策の趣旨で生命保険に加入した可能性も否定することはできないことを考えると、相続人の実質的公平という見地から、特別受益に準じて相続分算定に当たり考慮するのが相当である。その場合、特別受益に準ずる額を幾らとするかについては争いがあるが、被相続人が死亡時までに払い込んだ保険料の保険料総額に対する割合を保険金に乗じた額(いわゆる、「保険金額の修正説」。)とする。本件記録上、生命保険の種類によっては保険料総額、払込保険金額、満期等不明なものもあるが、○○生命の関係では、〈1〉保険金635万5400円(受取人は相手方友子、相手方広各2分の1)については、契約年数と満期年数の割合は25分の15であるから、特別受益に準ずる額は、相手方友子、相手方広とも各190万6620円、〈2〉保険金1588万2500円(受取人は申立人正子)については、契約年数と満期年数の割合は25分の15であるから、特別受益に準ずる額は、申立人正子952万9500円、〈3〉保険金4460万5810円(受取人は申立人正子3分の2、相手方広3分の1)については、契約年数と満期年数の割合は30分の8であるから、特別受益に準ずる額は、申立人正子792万9920円、相手方広396万4960円、〈4〉保険金9844万0920円(受取人は申立人正子、相手方広各2分の1)については、契約年数と満期年数の割合は15分の2であるから、特別受益に準ずる額は、申立人正子、相手方広各656万2728円となり、結局、生命保険金の特別受益に準ずる額合計金は、申立人正子が2402万2148円、相手方友子が190万6620円、相手方広が1243万4308円、合計3836万3076円となる(なお、嘱託の結果、○△生命は満期不明、△△生命は契約なし、○△町農協は該当なしの回答なので特別受益の計算から外すこととする。)。

以上によれば、特別受益財産(準ずる財産を含む。以下同じ)は、申立人正子が3210万1148円、相手方友子が190万6620円、相手方広が3175万4308円、合計6576万2076円となる。

5  みなし相続財産の価額

被相続人一の遺産の相続開始時(昭和58年2月25日)における価額は、別紙1遺産目録「相続開始時価額」欄記載のとおりであり、その合計額は、6億5319万9933円となる。

そして、特別受益財産の相続開始時の価額の合計は、上記4のとおり6576万2076円であるから、これを加えたみなし相続財産の価額は、7億1896万2009円となる。

6  相続開始時における相続分

被相続人一についての相続開始時における各相続人の相続分を算定すると、次のとおりである(1000円未満四捨五入)。

(1)  申立人正子

7億1896万2009円×1/2-3210万1148円 = 3億2738万円

(2)  相手方友子

7億1896万2009円×1/4-190万6620円 = 1億7783万4000円

(3)  相手方広

7億1896万2009円×1/4-3175万4308円 = 1億4798万6000円

7  遺産分割時における相続分

被相続人一の遺産の遺産分割時における価額の合計額は、上記2のとおり11億6326万2001円となり、これに上記6の相続開始時における相続分の割合(分母は、各相続人の相続開始時における相続分を合計した6億5320万円とする。)を乗じて、遺産分割時における各相続人の相続分を算定すると、次のとおりである(小数点以下4捨5入)。

(1)  申立人正子

11億6326万2001円×32738/65320 = 5億8302万0076円

(2)  相手方友子

11億6326万2001円×177834/653200 = 3億1669万8614円

(3)  相手方広

11億6326万2001円×147986/653200 = 2億6354万3311円

8  遺産分割の方法

一件記録に現れた遺産の種類、性質、利用の状況及びその経緯、各相続人の生活状況、分割方法についての希望、その他一切の事情を総合すると、被相続人一の遺産は、次のとおり分割するのが相当である。

(1)  不動産について

符号1の土地は、相手方広の経営する藤村医院の近くにあり、同病院の看護婦寮建設の計画もあること、符号2の土地上には、相手方広名義の建物があり、そこで同人が藤村医院を経営していること、その地続きには相手方広の住居もあること、申立人正子は取得を希望しておらず、相手方友子に取得させるのも相当でないこと、しかも、両土地には、相手方広を債務者として2億円の根抵当権が設定されていることから、符号1、2の土地は相手方広に取得させる。

符号3の土地は、申立人正子が取得を希望し、ほかに取得希望者もいないので、申立人正子に取得させる。

符号4の土地上には符号1の建物があり、被相続人一の生前から自宅として使用しており、現在申立人正子が居住していること、相手方友子に取得させるのも相当でないことから、符号4の土地及び符号1の建物は申立人正子に取得させる。

符号5の土地上には符号2の建物があり、現在相手方友子が夫栄とともに石井クリニックを開業していること(相手方友子は耳鼻科医、栄は外科医)からすると、相手方友子の取得とすることが望ましく、しかも、特に他の相続人の反対もないことから、符号5の土地、符号2の建物は相手方友子に取得させる。

符号8ないし11の土地上の建物には、相手方友子夫婦が居住していることからすると、これらの土地は相手方友子の取得とすることが望ましいともいえるが、同人は、後記のとおり符号12ないし14の土地を強く希望し、そのためには符号8ないし11の土地を手放してもやむを得ないとの意向であること、後記検討の結果符号12ないし14の土地は相手方友子の取得とするものであるが、その場合、同人の相続分の枠からみて、更に符号8ないし11の土地を取得させることは困難であること、申立人正子は取得を希望していないが立地条件からみて資産価値もあることから、符号8ないし11の土地は申立人正子の取得とする。なお、相手方友子は、この土地上の同人所有の建物は責任を持って収去することを確約しているので、特段の法律問題が生ずるものとは思われない。

符号12ないし14の土地は、被相続人一が申立人正子の兄から昭和53年に購入したものである。この土地を巡る申立人正子と相手方友子の争いが、本件事件の円満解決を困難にしている主原因である。申立人正子は、被相続人一の意向として、相手方広が藤村医院を継いだ後はこの土地上に老人病院を建設する夢があったとか、将来は相手方広に取得させたいとか主張する。これに対して、相手方友子は、自己の病院経営のため絶対必要な土地であり、他に適当な土地もないことを挙げる。思うに、被相続人一に老人病院建設の夢があったとしても、既に同人の死亡により実現の見通しはなくなったものとみられること、申立人正子自身にはこの土地を利用する計画が現在あるわけではないこと、相手方広自身も既に符号2の土地で病院を開業しておりこの土地に移転する計画が現実のものとしてあるわけではなく同土地の帰属に固執するものではないこと、藤村医院前道路の拡張の点も、計画自体は昭和40年からあるが着手及び完成の時期は未定であるし、藤村医院の建物は昭和58年に建築されたことからすると将来道路拡張があっても病院運営に直ちに支障がないように建築されたものと思われること、申立人正子の兄はこの土地を所有していたのはごくわずかにすぎず、その取得の経過が大切とも思えないこと、これに対して、相手方友子は、符号12ないし14の土地を強く希望し、そのためには現在の居住地である符号8ないし11の土地を手放してもやむを得ないとの意向であり、同人の現在の病院は敷地として種々の不便があることは事実であり、新たに病院用地としての必要性もあること、申立人正子や相手方広はこの土地がなくても生計の基盤や家業が失われないこと、この土地を相手方友子の取得としても被相続人一の意向に沿わないものとも思えないことなどからすると、この際、相手方友子に符号12ないし14の土地を取得させることが相当である。

符号6の土地は、もとぶどう畑で、住宅建設の目的で購入したが、市街化調整区域のため利用が制限されている。符号7の土地上には符号3の建物があり、元は看護婦寮として利用されていたが、昭和60年以来空家状態である。符号15ないし17の土地は、市街化区域内にあるが、住環境は良好とはいえず、申立人正子は、相手方友子の病院開業のための土地として購入したといい、相手方友子は、相手方広の開業した藤村医院の経営が思わしくない時に転売して借金の返済にまわせるように考えていたというように、その購入目的は必ずしも判然としないが、市街化区域内にあるものの、住環境は良好とはいえず病院経営の適地とは必ずしもいい難い。符号18の土地は、主として雑木林となっており開発が抑制されている。これら符号6、7、15ないし18の土地、符号3の建物は、現在特に使用を必要としたり強く取得を希望する者はいないし、申立人正子は、符号7、15ないし17を希望しないというが、資産性や各相続人の相続分の枠をも考慮して、申立人正子に取得させることとする。

符号4の建物(借地権を含む。)は、当時医学生であった相手方らのために購入したマンションの1室であるが、卒業後は空家となり、申立人正子が時々掃除したりして維持管理している。現在特に必要とする者はいないが、資産性も考慮して、申立人正子に取得させることとする。

以上によれば、申立人正子に対し、符号3、4、6ないし11、15ないし18の土地(合計額は、4億4193万円)、符号1、3、4の建物(合計額は、9586万円)を取得させ(合計額は、5億3779万円)、相手方友子に対し、符号5、12ないし14の土地、符号2の建物(合計額は、2億4707万円)を取得させ、相手方広に対し、符号1、2の土地(合計額は、1億9044万円)を取得させることとなる。

そして、別紙1遺産目録不動産符号3、6ないし8、10、12ないし16記載の土地につき、既に相続を原因として所有権移転登記(決定相続分を持分とする)が経由されており、更に、相手方友子は、相続税支払いのため、同土地につき、自己の持分に大蔵省を抵当権者とする抵当権設定登記を経由している。したがって、上記取得土地に応じて、相手方友子及び相手方広は、申立人正子に対し、別紙1遺産目録不動産符号3、6ないし8、10、15、16記載の土地につき、遺産分割を原因とする各4分の1の持分移転登記手続きを、申立人正子及び相手方広は、相手方友子に対し、別紙1遺産目録不動産符号12ないし14記載の土地につき、遺産分割を原因とする申立人正子は2分の1の、相手方広は4分の1の各持分移転登記手続きをしなければならない(更に、相手方友子は、自己の取得土地以外の土地に設定された上記抵当権設定登記を抹消しなければならないが、この点は、任意の履行を求め主文に掲げない。)。

(2)  不動産以外のその他の財産について

不動産以外のその他の財産についての取得者及びその説明は、別紙4その他の財産の分割時価額、取得者、その説明欄(編略)記載のとおりであり、これを金銭に評価すると、申立人正子に対し、合計5362万4532円、相手方友子に対し、合計7184万3670円、相手方広に対し、合計6249万3798円を取得させることとなる。

なお、可分債権については、原則として、相続開始とともに相続人に当然に分割承継され遺産分割の対象とならないが、本件では遺産分割の際改めて分割の対象とし取得区分を変更することの合意もあるし、事案に鑑み、遺産分割の対象とするのが相当と思われる。

(3)  償還関係について

上記(1)(2)によれば、各相続人の取得分を金銭に評価すると、申立人正子が合計5億9141万4532円、相手方友子が合計3億1891万3670円、相手方広が2億5293万3798円となり、遺産分割時における上記各相続人の相続分と比較すると、申立人正子が839万4456円、相手方友子が221万5056円多くなり、逆に、相手方広が1060万9513円不足することとなるので、金銭支払いによる調整措置が必要となるところ、その金額については後記9、10も考慮して決定することとする。

9  手続費用

鑑定費用300万円は、法定相続分に応じた負担とする。相手方友子及び相手方広は、鑑定費用を予納した申立人正子に対し、各75万円(便宜上4分の1ずつとする。)の償還をすべきである。

10  相続財産に関する経費

相続財産に関する経費についても、遺産分割の審判の対象とすることに問題がなくはないが、これを遺産分割手続きの中で精算することにつき特に異論がなく(相手方友子も、別途の処理にこだわっている趣旨とも思われない。)、将来合意により解決する見通しもなく紛争が長期化するおそれもあること、申立人正子が立て替えて支払っているので第三者に影響を及ぼすことはないことから、積極に解することとする。申立人正子の主張する経費は別紙6相続財産に関する経費支払い一覧表(編略)記載のとおりであり、一部領収証の紛失したものもあるが、ほぼ申立人正子の主張するとおりの経費を同人が立て替えて支払っていることが認められる。そして、この相続財産に関する経費については、個々の相続財産(積極財産)及びその収益から個別に精算されるべきであるが、本件の場合、経費が多岐にわたることや個々の財産との対応が明らかでないものも含まれることから、次のとおりの負担とするのが相当である。

葬儀関係費1007万7200円については、申立人正子が実質的な葬儀主宰者であること、被相続人一の地位、職業からみてかなりの香典等もあり、葬儀関係費のいくらかはそれで充当されたのではないかと思われるが申立人正子はこの点を明らかにしていないこと、葬儀関係費の支出の規模、内容について他の相続人の意思が反映しているとは思われないことを考慮して、申立人正子の負担とする。

税金950万4190円(固定資産税-○○県所在関係)については、本来は各不動産を取得する者の負担とすべきであるが、固定資産税の明細(特に、どの不動産に対応するものか)が不明であること、各相続人の取得する不動産は上記8のとおりでありほぼ相続分に近いことを考慮して、法定相続分に応じた負担とすることとし、相手方友子及び相手方広は、立替払いした申立人正子に対し、各237万6048円(便宜上4分の1ずつとする。小数点以下4捨5入。以下同じ)の償還をすべきである。

税金38万8480円(固定資産税―○○区所在関係)については、別紙1遺産目録符号4記載の建物に関するものであり、その取得者である申立人正子の負担とする。

税金39万5300円(自動車税)については、別紙1遺産目録その他の財産7(2)記載の自動車に関するものであり、その取得者である相手方広の負担とする。

火災保険132万9702円(農協、共済)及び設備費6万1000円(○○○、○△)については、内容が不明であること、申立人正子の利益になるものと考えられることから、申立人正子の負担とする。

雑草管理費131万5170円については、別紙1遺産目録符号12ないし14記載の土地の費用と思われるが、申立人正子は、この土地を一時実兄の選挙事務所等に利用させていたこと、しかし、賃料は受け取っていなかったこと等の事情があるので、取得者である相手方友子の負担とさせず、申立人正子の負担とする。

税務一般費200万円については、相続税申告(修正申告を含む)に関するものと思われるが、各相続人の利益になるものであるから、法定相続分に応じた負担とすることとし、相手方友子及び相手方広は、立替払いした申立人正子に対し、各50万円(便宜上4分の1ずつとする。)の償還をすべきである。

マンション管理料220万円及びマンション改築費133万円については、別紙1遺産目録符号4記載の建物に関するものであり、その取得者である申立人正子の負担とする。

町県民税696万5510円は、申立人正子が立て替えて支払っているところ、本来被相続人一の支払うべきものであったと思われ、各相続人が法定相続分に応じて負担すべきであるから、相手方友子及び相手方広は、立替払いした申立人正子に対し、各174万1378円(便宜上4分の1ずつとする。)の償還をすべきである。

57年度の固定資産税のうち、474万4079円については、相続財産となるべきであった後記○○銀行○△支店の普通預金〈3〉普通預金(No.88988)を引き下ろして支払っていることから、精算関係は生じないものというべきであるが、同年度のその余の固定資産税305万0121円は、申立人正子が立て替えて支払っているところ、本来各相続人が法定相続分に応じて負担すべきであるから、相手方友子及び相手方広は、立替払いした申立人正子に対し、各76万2530円(便宜上4分の1ずつとする。)の償還をすべきである。

小作地解放代金70万円は、別紙1遺産目録符号3記載の土地に関するものであり、その取得者である申立人正子の負担とする。

その他雑費100万円については、内容が不明であることから、申立人正子の負担とする。

以上によれば、立替金の償還として、申立人正子に対し、相手方友子は、537万9956円、相手方広は、577万5256円を支払うべきである。

11  遺産取得の代償

上記8ないし10によれば、本件遺産分割の代償として、申立人正子は、相手方広に対し、186万9200円、相手方友子は、申立人正子に対し、612万9956円、相手方友子は、相手方広に対し、221万5056円を支払わなければならない。

よって、上記検討した以外の手続費用は各自の負担として、主文のとおり審判する。

(家事審判官 中本敏嗣)

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